食品を扱う企業は、適切な温度管理によって細菌やウイルスの繁殖を抑えて食中毒を防ぐ必要があります。例えば腸管出血性大腸菌は十分に加熱されていない肉や生野菜などに付着しており、食後12時間ら60時間ほどで激しい腹痛や下痢などの症状が起きます。症状が重い場合には死に至ることもありますが十分に加熱すれば被害を防げます。ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝に付着しており食後1日から2日ほどで腹痛や下痢、吐き気などの症状が現れます。
熱に弱いので85度以上で1分間以上加熱すれば食中毒による被害を防げます。食品の温度管理を怠ると細菌やウイルスが繁殖して食中毒が起き、訴訟などのトラブルに発展することがあります。訴訟になれば損害賠償を請求されるだけでなく、企業の社会的な信用度も低下して営業活動に影響を及ぼすので注意が必要です。適切に温度管理を行い食品の安全性を高めるため、日本では2021年から全ての食品関連企業にHACCPという衛生管理手法の導入と運用が義務付けられました。
HACCPは危害要因分析と重要管理点という概念で成り立っており、全ての工程を細分化してリスク管理を行います。危害要因とは微生物や化学物質、異物など健康被害を及ぼす可能性があるもののことです。HACCPでは危害要因による健康被害を予測した上で明確なルールを定め、事業所全体で衛生管理を行います。重要管理点とは加熱や冷却など特に重要な工程のことで、厳格な基準によって連続的かつ継続的な監視と記録が行われます。
HACCPを導入すると製品が完成し出荷されるまでの全ての段階で適切なリスク管理を行うため、不良品が発生して食中毒が起きるのを防ぐことができます。